ZOROPPE

いつもじぶんにごくろうさん

だらしなくて、はしたない

キチッとしてない「だらしなくて、はしたない」世界に飛び込みたくなる瞬間がある。

私はふだん、わりとキチッとしたことを仕事にしています。

フォーマットに合わせるとかグリッドに揃えるとか、こっちの束が原稿であっちの束がお客様校正紙、みたいなわりとキチッとしてなければならない仕事。

だからときどき、キチッとしてない「だらしなくて、はしたない」世界に飛び込みたくなる瞬間がある。

たとえば休日の夕方、銭湯に行って脱衣場のベンチにフルチンで仰向けになって白髪だらけの陰毛の合間からド包茎の芋虫だらんとさせて横たわってるじいさんなんかを見ると、あー、だらしないなー、はしたないなーと思って、それがなんだか落ち着くのです。ほっとするのです。

一週間の疲れをでっかい湯舟で洗い流して風呂屋を出ようとすると、年頃三十四、五の小股の切れ上がったジャージ姿の人妻風情が頬を赤らめながら女湯の出口から出てきて、なんとなしに目が合った。

旦那と子供が外で待っているのだろうなと思いきや、彼女は自転車に乗ってひとり走り去る。

さっきまで身につけていたブラジャーとパンティが入ってるであろう小袋を肩にかけて颯爽と走り去る。

もしかしたらいま彼女はノーブラかもしれない。ノーパンかもしれない。

ていうか、俺を誘っていたかもしれない!

ああ、だらしない! ああ、はしたない!

彼女のあとを追いかけたい衝動をぐっとこらえて、やおら財布の小銭を確かめてから、帰り道にある、傾きかけた大衆酒場ののれんをくぐり、日曜の宵の口、近所の老人たちが自然と足を運んで、誰と話すでもなく、おのおの目の前の湯豆腐をつつきながら酒をあおるカウンターで、私はひとり、サッポロの大瓶をやって火照ったカラダとちんこを鎮める。

それから家に帰って、息子の大好きなお好み焼きをホットプレートで焼きながら、俺はあと何年こんなふうにキチッとしていられるだろうかと自問自答する。

だらしなくて、はしたない、こんなパパだけど……。

そうして私は、次の日からのキチッとした仕事に備えて、今夜は人妻モノのエロ動画を観ようと心に決めてから、息子に「早くねんねしないと大きくなれないんだぞ」などと偉そうに小言をぶつのです。

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