ZOROPPE

いつもじぶんにごくろうさん

そっくりな息子

息子

息子が生まれたときは、ああ、この目元はオレ似だな、うん、口元はワタシ似ね、などと夫婦であれこれ言いながら楽しんでいたものですが、ここのところ自分でうすうす気づいていながら、ほかの誰からも十中八九「妻似」と言われるようになり、父ちゃん正直つまんない。

しいていえば黒目が大きいのとつむじが二つあって髪の毛がゆるふわウェーブなことくらいで、男友達からの「オマエの子じゃないんじゃね?」的なお決まりジョークにも、あれ? なんだかうまく笑えないボクがいるよ……。
最近、息子はとりあえず目に映ったものはなにがなんでも手に取って触ってみよう、いじってみようとします。手の届く範囲に危ないものを置かないように気をつけるのはもちろんですが、抱っこしているときなど、私のメガネをひったくろうとするので困ったものです。

オーボールというくねくねに曲がる素材でできた赤ちゃん用のおもちゃがあって、それでひとり遊びする息子を観察していると、左手で持って振っているのが多いことに気づきました。

よっしゃ、こうなったら(ふだんは右利きの)サウスポーに育て上げよう! という話になり、私はそのうち「なんでホークスの和田のボールは打ちづらいのか」をとうとうと妻に語りはじめました。

でも左投げだと(ファースト以外の)内野手になれないのでやっぱり右投げのほうがいいかな、うん、それはなんでかっていうと、ゴロを処理してファーストへ投げるときに左投げだとワンステップよけいな動作をしなくてはならなくて……と私は内野ゴロをさばくジェスチャーを交えながら説明をし、とはいえ左打ちのほうがいい、なんで左打ちのほうが有利かというとね……と野球談義に熱くなってきたころにはもう妻は台所で洗い物をしていて、てきとうにあいづちを打ってはいますが、話などまったく聞いていないことを私は知っています。

しかし(自分で言うのもなんですが)息子はとてもよくできた子で、そうやって私が夢中になってなにかを話しているときは、黙ってそれを聞き入っているようなぼうっとした顔になります。私は息子のそのぼうっとした顔が大好きです。

そんな息子の顔を見て妻は、人の話を聞くふりをして、まったく聞いてないときの私の顔にそっくりだといいます。