ZOROPPE

いつもじぶんにごくろうさん

夫婦水入らずの夜

松本人志監督の『R100を観ながら「やっぱりこの人のお笑いセンスがわからない。私はいままで松本人志で笑ったことがない」というようなことを唐突に妻が言った。

私はそれについてとくになにを言うでもなく、ほえー、というような顔をしたが、それを鼻白んだと受け取った妻は続けざま「あなただって私が小林聡美(が主演、もしくは「そういう感じの空気感」がウリ)の映画を観てるとつまんなそうにあっちの部屋にいったりするじゃない。それと同じよ」と言った。

なにをひとりで勝手にぷりぷりしているのかと思ったが、結婚生活をうまくやっていくためには、こういう当て付けをスルーできる能力が必要だ。ましてやこの日は息子がおばあちゃん家に泊まりに行って夫婦水入らずで過ごせる滅多にない夜だったので、寝しなに妻の布団へ華麗なスライド・インをキメるためにも、今ここでつまらぬケンカなどしたくない。

そのうち妻はテレビのある部屋から離れ、ダイニングテーブルに座ってヘッドホンで槇原敬之あたりを聴きながら、江角マキコあたりのエッセイを読んでいるようだったが、エンディングロールになるとそばへ来て「で、大森南朋、最後どうなった?」などと虫のいいことを訊いてくるものだから、いろいろめんどくさくなってシカトして寝た。