ZOROPPE

いつもじぶんにごくろうさん

昔の上司が死んだ

おととい、以前勤めていた会社で上司だった方の訃報が届いた。糖尿病からの脳の病気で亡くなったらしい。

その上司は当時、エロ本の編集長だった。つまり私はその部下で、エロ本の編集者だった。

思えば「徹夜上等! 飲む・打つ買うはあたりまえ!」のアウトローを気取った三流出版社の編集者たちの中で、彼は「飲む」だけをやらない下戸だった。逆に「飲む」しかやらない私を真っ昼間から場外馬券売場へと誘いだし、見るからに身体に悪そうなジャンクフードをツマミに彼はコーラ、私はチューハイをあおって馬が走るモニターに向かってわけのわからない雄叫びをあげながら仕事をサボっていたものだ。

たしか5歳ほど年上だった彼が「死んだ」と聞いたとき、なにか事件に巻き込まれたのだろう、と思った自分がいた。私がその会社を辞めた後、しばらくして彼も「なにか事件に巻き込まれ」てもおかしくないような業界に身を移したと噂に聞いていたからだ。

糖尿病が原因だったと知って、やっぱりそうか、と安心したような、でもちょっと期待はずれだったような不謹慎極まりない思いがめぐった。

明日、通夜に行って、彼に今の自分の近況を報告するつもりだが「こんにゃろ、いつの間にか足を洗ってカタギの会社に勤めやがって……早くこっちでまた遊ぼうよ」と声をかけられそうで、それは少し怖くて、なぜか少し嬉しい自分が、そこには、いるのだ。