ZOROPPE

いつもじぶんにごくろうさん

少しわくわくしました

TOM&Jerry

パソコンが苦手だというフリーランスの編集者さんから仕事が入ってきて、ここのところその人の手となり足となり状態だ。

メールはできるんだけど添付ファイルを送受信して開いたりすることが出来ないというんです。だから私が他のデザイナーさんからデータを受け取ったりそれを印刷用の入稿データへと補完したりもう「なんでも屋」状態。

年配の編集さんにはありがちありがち、てなもんで私からのデータはCDに焼いて、しかもスキャナーを持っていない彼からの手書きのラフや赤字の入った校正紙ももちろんすべて現物手渡し。ブツの取引は駅の改札で柵越しに、なんて身体を動かしてモノを作ってるかんじでこういうのもともと嫌いじゃないしひと昔まえの時代に戻ったみたいで少しわくわくしました。

昨日、一件はメールでもう一件は電話で新規の営業を二件かけた。営業は精神的にとても疲れるので苦手だったんだけど我が家の台所事情はいよいよそんなことも言ってられなくなった。どうせやるならまとめてやっちまえ、てんで善は急げ。人づてに紹介してもらったまったく面識のない編集さんに「仕事ください」とこちらからお伺いをたてるのは五年ぶりくらいのことだった。

結局メールの方は返事来ず。電話の方はケータイに二回かけて二回とも留守電だったので一度だけメッセージを残して夜七時、この程度じゃめげないぜ、と強がりながらもしょんぼり仕事部屋をあとにした。

夜の九時過ぎ、夕飯を食べ終わってソファでくつろぎながら映画を観ていたところにメッセージを残した先方さんから折り返しの電話が来た。

たぶんそのとき私はよそいきのとてもセクシーなとてもいい声で電話に出た。相手男のひとだけど。そして今度会ってくれるというのでとても嬉しかった。映画鑑賞中だったけどケータイの音を切らずにひそかに待っていたのです。だからものすごくほっとした。すっと身体がラクになった。

仕事は自然と湧いて降ってくるものだなんていつから思い始めたんだっけな。夜七時以降は仕事の電話を取らないだなんていつから勝手に決めたんだっけな。

六畳の仕事部屋兼リビングで電話もFAXも引かず電子メール環境すらまだなく、ケータイ番号をでかでかと名刺に刷り込んで、自転車で営業に原稿の受け渡しにと走り回り、寝ている間もケータイを手放せなかった十年前のあの頃のような初心に戻る覚悟をしたら、また少しわくわくしました。

またわくわくしなくなっちゃうときが来るだろうから、わくわくできるうちになるだけわくわくしておこうと思っているんです。

こうして日記を書いているあいだに昨日メールで営業かけた編集さんからも返事が来ました。めげないぜ……また次、行こう。