えらばれしもののふのゆくみち #4
【2005年6月19日の日記を再編集したものです】
»「えらばれしもののふのゆくみち #0」から順にお読みいただくとそこそこ話が楽しめます。
2005.6.14 tue. 11:32
ウェスパ椿山……
あてもなく「十二湖駅」から青森行きの電車に乗った俺はこの「ウェスパ椿山」いうなんともヒマがつぶせそうで楽しげな駅で降り、次の秋田方面の列車が来るまで小一時間、ここに滞在してみることにした。
駅に直結したテーマパーク。
敷地内には、このノボリがいたるところに掲げられ、たぶんこの女性のものであろう歌がエンドレスで流れて続けていた。
施設見取り図には「コテージ」という文字が目立つ。
2005.6.14 tue. 12:14
なにもない施設で小一時間やり過ごし、ようやく私を秋田の街へと運んでくれる「東能代行き」ワンマン普通列車に乗り込む。
ベンチシートでごろんと横になりたい衝動をマジ抑えしつつ、座面の浅いボックスシートですやすやと眠りについた。
目が覚めると車窓の外は快晴。
きゃいきゃい、きゃいきゃい……
くそぅ……今ごろ晴れてきやがってぇ……。
澄みきった日本海の絶景が見渡せるはずの超特等席は、前途有望な若者たちにキープされていた。
時刻は午後二時半を回ったところ。まだ今日はなにも食べていない。
2005.6.14 tue. 15:02
秋田駅着。
午後の駅構内は今朝より、抜群に活気がある。「ただ人がいる」そんな当たり前の光景が、抜群に嬉しい。
駅前のデパートのうどん屋で、本日初めての食事。
このたくあんは周りが燻したように茶色くなっていて美味だった。本当の燻製のような薫りもしたしこの辺だけの名物なのだろうか。(注・後に「いぶりがっこ」と判明)
アルコールがのどを通り胃に流し込まれる。世の中のどんなことでも許せるような優しい気持ちになった。
もちろんシメは、稲庭うどん。二段盛りをこれでもかと胃に放り込んだ。
2005.6.14 tue. 15:54
秋田駅の構内からそのまま通路で導かれるようにして、今日宿泊予定のホテルはあった。
わお。それにしても、なになに? いったいなんなの? これまた、おしゃれでモダンな複合ビルヂング。コンビニにレストラン、ゲームセンターから映画館まである。
吹き抜けのホールでは、高校生たちがテスト勉強。外の景色とのコントラストが今日の俺を物語るようだ。
すでに、今日の「秋田の夜」は決まった。
あのう、18時からのこの映画、大人一枚……。今夜は映画を観て、そのまま寝てしまおう。
そして明日の帰り道は、盛岡で途中下車してゴージャスに「冷麺&ひとり焼肉」で決まりだ!
ホテルでシャワーを浴びて着替え、缶ビールを二本空けたところで、もうそろそろ映画の時間だということに気付いた。俺は再びホテル階下の映画館へと急ぐ。
写真は、閑散とした上映二十分前のロビー。
アカデミー賞を総なめにした「ミリオンダラー・ベイビー」。さぞかし大勢の秋田市民でごった返しているかと思いきや……
そう……ここは焦らなくてよかった。観客は俺を含む、たった五人ぽっち。
神に選ばれし武士の見事なまでの先読みのハズしっぷりはとどまるところを知らない。
クリント・イーストウッドさんが映画の中でこう言ってた……
「左に出たい時は、まず右のつま先を出せ……」って。
»「えらばれしもののふのゆくみち #最終話」へつづく